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今も続く病院・施設の面会制限を考える~シンポジウムを視聴して

2025年5月24日、京都・同志社大学にて、病院や施設の面会制限を考えるシンポジウムが開催されました。「コロナ後の医療・福祉・社会を考える会」の主催、精神科医の高木俊介氏や静岡市立病院で感染管理室長を務める岩井一也氏が中心となって、コロナの5類移行も続く面会制限や過剰な感染対策の問題を提起しました。

会場には100名余が集まり盛会だったほか、オンライン参加も可能でした。現役の医師のほか、人類学者や障害者支援、アルコール依存症支援の活動をしている方々も登壇し、様々な観点からコロナ後の感染対策の問題を論じたシンポジウム。その概要をリポートします。

コロナ後の医療・福祉・社会を考える会
シンポジウムin京都/同志社大学 病院・施設の面会制限を考える



感染対策は「人権制限」を伴う、「文化」ではなく「科学」であるべき

会を主宰する高木氏が、日本にある93の大学病院のほとんどがコロナ前には無かった面会制限を続けていること、自由が無く医療が人権に優先されてしまっている問題を提起し、シンポジウムがスタート。

まず登壇したのは人類学者の磯野真穂氏、面会制限が作り出す「文化」の問題について、「信念」「実践」「象徴」の3つのキーワードを軸に論じられました。

・いくらでも来訪者を制限できる、医療者が許可したときのみ面会ができるという「実践」があり
・マスクをしている人がちゃんとしている人、道徳心のある人という「象徴」がつくられ
・感染対策は何も勝る善行であり、ルールはいかように設定してもいいという「信念」が生まれてしまった
・これが「文化」になることは避けなければならない。
→感染対策は「人権制限」を伴う。「文化」ではなく「科学」であるべき! とのお話でした。

興味深かったエピソードが1つ。日本医学学会に磯野氏が参加されたとき、いまだ会場にパーテーションが設置されていたのですが、科学的根拠が無く不要ではないかと指摘すると、すぐに撤去されたそうです。そのことについて出席の医師いわく「磯野さんが言ってくれてよかった、我々からは言えなかった」とのこと。

面会制限の問題しかり、マスクの問題しかり、病院の中にも当然おかしいと思っている人はいる。しかし組織の中で言えないことこそが、大きな問題ではないでしょうか。

いち早く面会制限やマスク必須をやめた静岡病院の事例

続いて静岡市立病院の岩井一也氏が登壇、日本の病院の中でいち早く面会制限やマスク必須を取りやめたことについて、規制を緩和していった流れを時系列に沿って説明されました。

・2020年秋 … マスク着用、消毒をお願いし、面会は極力控えてとお願い(禁止はせず)
・2021年 … 4月にはフル防護の服装をやめ、7月にはアクリルパネルを撤去、職員のマスク着用も求めず

科学の分野ではマスクに根拠はないのが世界のコンセンサス(共通認識)。様々な論文は出ているが総合的に見て効果はない、高機能とされるN95マスクも同様だと強調。

にも関わらず理不尽な感染対策が続けられてしまったことについて、2つの理由が挙げられました。
・おかしいと言う声が出なかった、あったとしてもメディアで拾われることがなかった
・コロナが続いたほうが病院の経営が安定する、静岡病院はコロナ対策で50億円ほどもらえた

このほかウイルス学者の宮沢孝幸氏、介助コーディネーターの渡邉琢氏、精神保健福祉士の佐古恵利子氏、匿名で参加の内科医の端くれ氏が登壇され、医療ジャーナリストの鳥集徹氏が司会進行を務め、それぞれの現場の体験や不合理な問題についての事例紹介や提言がありました。

若い人に期待、この問題を灯し続けて、静岡モデルを全国に

シンポジウムの後半は登壇者が並んでのパネルディスカッション、そして参加者からの質疑応答。印象に残ったやり取りを列記します。

Q.マスクが面会制限を支えていると思います。マスクが無くなったら問題が終わるのでは?
A.マスクはものすごく大きな感染対策の「象徴」なので、あるかもしれない。
A.マスクは連帯の「象徴」、みんなで頑張っているという「象徴」になっていた。

Q.医大生です。座学で質問をできる時間、こういう話を聞く時間が無い。医者が勉強をしないのは受験勉強のせい。いかに効率をよくするか、いかに結果を出すかになっているのが問題では?
A.医者は学歴社会でゴリゴリのエリート。決められたルールの中でやるのは上手、でも前提を疑うことをしない。

Q.岩井さんにお願いですが、市長・議員・医師会を巻き込んで静岡モデルを全国に広げてほしい。
A.県のメーリングリストに「うちも(面会制限を)やめました」という声が少しずつ出てきている。

最後に司会の鳥集氏や高木氏からこんな話がありました。
「リベラルな人たちが今まで人権人権と言っていたのに、すごく厳しい感染対策を求めて(人権を損なって)きたのは反転現象に感じた」
「今日は若い人の来場もあった。この問題を灯し続けてほしい。静岡でできたことを全国に。これからもよろしくお願いします」

会場からは次々と手が挙がり、予定時刻を大幅に超過。それほど参加者の関心が強く、熱量の高いシンポジウムであったことが印象的でした。過剰な感染対策は、世界的に見ても異常であり、非科学的であり、そして人権侵害ですらある。これを機に、議論がさらに広がっていくことを願ってやみません。


配布用チラシ

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