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岩井一也(いわい かずや) 医師、管弦楽団指揮者
プロフィール
1965年大阪府生まれ。医師。静岡市立静岡病院感染管理室長、緩和ケア内科主任科長、血液内科科長。日本内科学会総合内科専門医、日本感染症学会評議員。管弦楽団等の指揮者としても活躍している。
静岡市立静岡病院
Q1.いまだ多くの場所でマスクの常用が続いている日本社会の現状をどのように思いますか?
世界中で現在でもこれだけ多くの人がマスクをしているのは、日本と台湾など東アジアのごく一部の国であると思います。新型コロナウイルス感染症の感染対策として始まったユニバーサルマスクですが、どの国も当初の脅威ではなくなったと判断されると同時にユニバーサルマスクは行われなくなりましたが、日本ではマスクを着用することが道徳的に善とする風潮が定着してしまったと思います。
特に日本ではマスク着用に関するメリットのみが強調されました。しかしその理由は必ずしも科学的根拠に基づいたものではなく、国や学会などは推奨すると表現していますが、国民側が過大評価をしたのではないかと思います。一方、マスクによるデメリットについては日本ではほとんど話題になることはありませんでした。
Q2.マスクは個人の判断であると国が指針を出して以降、「マスクはするもしないも個人の自由」という風潮がありますが、これについてどのように思いますか?
個人の自由という意味で異論はありません。しかしこの指針を出したのは5類になった時点です。初めからマスクを推奨はするが最終的には個人の判断であり、強制することがないようにと言っていたなら信頼できますがそうではありませんでした。また個人の判断ですが、判断するための情報を開示していないと思います。人混みではマスク着用を推奨していたり、医療機関でマスクをすることが効果的などと科学的に効果が確認されているかのようなアナウンスをしていますが、その根拠を示していません。
また、この“個人の判断”が独り歩きして、社会においてマスクについて話題にすることが悪であるかのような雰囲気が出来上がりました。国は国民によるマスクに関する自由な議論を間接的に阻害しているように思います。
Q3.小学校高学年から中学生を中心に、マスクが外せなくなった子どもたちが一定の割合で残っていますが、この状況についてどのように思いますか?
由々しき問題です。自己の容姿に過剰に反応する多感な児童・生徒がマスクを外せなくなっています。感染対策に必要と思っていても問題ですし、顔を見られたくないと思っているとしても問題です。いずれにしても成り行きに任せるのではなく、コロナ対策禍がもたらした重大な弊害として認識し対処するべきです。
Q4.医療機関では未だにスタッフや患者のマスク着用義務が解除されていない所も多いですが、これについてどのように思いますか? また、医師として懸念していることはありますか?
厚生労働省や感染症の学会が依然として推奨の立場を取っていますが、その根拠は明らかにされてはいません。それでは配慮という名のお気持ちであるわけです。しかし医療機関では推奨を義務と解釈し、基本的な人権を侵害しています。患者さんの尊厳を尊重するという基本的な医の倫理に抵触しています。
Q5.その他、マスクの問題についてご意見、ご見解をお願いいたします。
場合によってマスクを着用することはあり得ることですが、四六時中マスクを着用するいわゆるユニバーサルマスクは異常な使用法です。新型コロナウイルス感染症が脅威ではなくなったと判断されたため2023年5月に5類に指定されました。国が行ってきたコロナ対策もほとんどすべて廃止されています。マスク着用のみが継続される合理的理由はありません。しかも新型コロナウイルスは空気感染で拡がるので、通常のマスクで防ぐことはできません。二重の意味でコロナ感染に対してマスクは必要ないのです。加えて医学以外にも社会学、教育学の面からも望ましくない面が多々指摘されています。
マスクに関してもっと議論を尽くさなければなりません。
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